消費税率改正Q&A(指定役務・予約販売書籍・通信販売・その他の経過措置)
指定役務の提供の税率等に関する経過措置
(指定役務の提供の税率等に関する経過措置の概要)
問1 指定役務の提供の税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した役務の提供に係る契約で、その契約の性質上、当該役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないものであって、当該役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割して支払われる契約(割賦販売法第2条第6項に規定する前払式特定取引に係る契約のうち、同項に規定する指定役務の提供に係るもの)に基づき、施行日以後に当該契約に係る役務の提供を行う場合において、当該役務の内容が次の①及び②に掲げる要件に該当するときは、当該役務の提供については、旧税率が適用されます(改正法附則5⑤、改正令附則4⑦)。ただし、指定日以後において当該役務の提供の対価の額の変更が行われた場合は、この経過措置は適用されません。
① 当該契約に係る役務の提供の対価の額が定められていること。
② 事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
(指定役務の提供の具体例)
問2 改正令附則第4条第7項に規定する「指定役務の提供」とは具体的にどのようなものをいうのですか。
【答】
役務の提供に関する経過措置の対象となる「指定役務の提供」とは、割賦販売法第2条第6項に規定する前払式特定取引のうちの指定役務の提供をいい、具体的には、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便宜の提供等に係る役務の提供をいいます。
なお、資産の購入を前提にその購入対価を積み立てることとしているようなもの(例えば、デパートの積立会員制度を利用した商品等の購入)は、これに含まれません(経過措置通達20)。
《参考》
○ 割賦販売法(抄)
(定義) 第2条
6 この法律において「前払式特定取引」とは、次の各号に掲げる取引で、当該各号に定める者に対する商品の引渡し又は政令で定める役務(以下「指定役務」という。)の提供に先立つてその者から当該商品の代金又は当該指定役務の対価の全部又は一部を2月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して受領するものをいう。 商品の売買の取次ぎ 購入者 指定役務の提供又は指定役務の提供をすること若しくは指定役務の提供を受けることの取次ぎ 当該指定役務の提供を受ける者
○ 割賦販売法施行令(抄)
(指定商品等)
第1条
2 法第2条第6項の政令で定める役務は、別表第二に掲げる役務とする。
別表第2(第1条関係)
1 婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供、衣服の貸与その他の便益の提供及びこれに附随する物品の給付
2 葬式のための祭壇の貸与その他の便益の提供及びこれに附随する物品の給付
予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置
(予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置の概要)
問3 予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、指定日前に締結した不特定かつ多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡する書籍その他の物品に係る対価の全部又は一部を施行日前に領収している場合において、その書籍等の譲渡を施行日以後に行うときは、その領収した対価に係る部分の書籍等の譲渡については旧税率が適用されます(改正令附則5①)。
(「定期的」の意義)
問4 改正令附則第5条第1項《予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置》に規定する経過措置は、「定期的に継続して供給すること」が適用要件とされていますが、この場合の「定期的」とはどのような周期をいうのですか。
【答】
「定期的に継続して供給する」とは、週、月、年その他の一定の周期を単位とし、おおむね規則的に継続して供給することをいいます。
通信販売等の税率等に関する経過措置
(通信販売等の税率等に関する経過措置の概要)
問5 通信販売等の税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
通信販売(不特定かつ多数の者に商品の内容、販売価格その他の条件を提示し、郵便、電話その他の方法により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う商品の販売をいい、予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置に規定する契約に係る販売を除きます。)の方法により商品を販売する事業者が、指定日前にその販売価格等の条件を提示し、又は提示する準備を完了した場合において、施行日前に申込みを受け、提示した条件に従って施行日以後に商品を販売するときは、その商品の販売については旧税率が適用されます(改正令附則5③)。
(「不特定かつ多数の者に販売条件を提示すること」の範囲)
問6 改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する経過措置の適用対象となる通信販売は、「不特定かつ多数の者に販売条件を提示すること」が要件とされていますが、具体的にはどのような場合をいうのですか。
【答】
「不特定かつ多数の者に販売条件を提示すること」とは、一般に、新聞、テレビ、チラシ、カタログ、インターネット等の媒体を通じて購読者又は視聴者等に対して販売条件を提示することをいいますから、例えば、○○頒布会、○○友の会等と称する会で、相当数の会員で構成され、かつ、会員数が固定的でないような会が会員等を対象としてこれらの媒体を通じて販売条件を提示するような場合はこれに該当しますが、訪問面談により販売条件を提示することはこれに含まれません。
(「提示する準備を完了した場合」の範囲)
問7 改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する「提示する準備を完了した場合」とは、具体的にはどのような場合をいうのですか。
【答】
改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する「提示する準備を完了した場合」とは、販売条件等の提示方法に応じ、いつでも提示することができる状態にある場合をいいますから、例えば、販売条件等を掲載したカタログ等の印刷物の作成を完了した場合などがこれに該当します。
(売買契約の申込みの方法)
問8 改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する経過措置の適用対象となる通信販売は、「郵便、電話その他の方法により売買契約の申込みを受けること」が要件とされていますが、「その他の方法」による売買契約の申込みにはどのようなものがありますか。
【答】
「その他の方法」による売買契約の申込みには、例えば、インターネット通信を利用した申込みや預貯金の口座に対する払込みによる売買契約の申込みが含まれますが、訪問面談による売買契約の申込みは含まれません。
(「商品の販売」の範囲)
問9 改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する「商品の販売」には、通信教育等の役務の提供が含まれますか。
【答】 改正令附則第5条第3項《通信販売等の税率等に関する経過措置》に規定する「商品の販売」は、物品の販売に限られませんので、通信教育等の役務の提供も含まれます。
その他の経過措置
(長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)
問10 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、施行日前に行った消費税法第16条第1項《長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》に規定する長期割賦販売等について同項の適用を受けた場合において、当該長期割賦販売等に係る賦払金の額で施行日以後にその支払期日が到来するものがあるときは、当該賦払金に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正法附則6)。
(工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)
問11 工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、指定日から施行日の前日(平成26年3月31日)までの間に締結した消費税法第17条第1項《工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例》に規定する長期大規模工事又は同条第2項に規定する工事(以下「長期大規模工事等」といいます。)の請負に係る契約に基づき、施行日以後に当該契約に係る目的物の引渡しを行う場合において、当該長期大規模工事等に係る対価の額について施行日の属する年又は事業年度以前の年又は事業年度においてこれらの規定の適用を受けるときは、次の算式により計算した金額に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正法附則7、改正令附則9)。
なお、事業者が、この経過措置の適用を受けた目的物の引渡しを行った場合には、その相手方に対する当該目的物の引渡しがこの経過措置の適用を受けたものであること及び適用を受けた部分に係る対価の額を書面で通知することとされています(改正法附則7④)。
(特定新聞等の税率等に関する経過措置の概要)
問12 特定新聞等の税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、不特定かつ多数の者に週、月その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞又は雑誌※で、発行者が指定する発売日が施行日前であるもの(特定新聞等)を施行日以後に譲渡する場合、その譲渡については旧税率が適用されます(改正令附則5②)。
※ 平成25年10月30日政令304号により、雑誌は、経過措置の対象から除かれました。
(有料老人ホーム(介護サービス)の税率等に関する経過措置の概要)
問13 有料老人ホーム(介護サービス)の税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームに係る終身入居契約(当該契約に基づき、当該契約の相手方が、当該有料老人ホームに入居する際に一時金を支払うことにより、当該有料老人ホームに終身居住する権利を取得するものをいいます。)で、入居期間中の介護料金(消費税が非課税とされるものを除きます。)を入居一時金として受け取っており、かつ、当該一時金について当該事業者が事情の変更その他の理由によりその額の変更を求めることができる旨の定めがないものに基づき、施行日前から施行日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合には、施行日以後に行われる当該入居一時金に対応する役務の提供については旧税率が適用されます(改正令附則5④)。
ただし、指定日以後に当該一時金の額の変更が行われた場合には、当該変更後に行う役務の提供については、この経過措置が適用されません(改正令附則5④ただし書)。
(リース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)
問14 リース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、施行日前に行ったリース譲渡(所得税法第65条第2項又は法人税法第63条第2項本文に規定するリース譲渡をいいます。)について消費税法施行令第32条の2第1項《リース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》の規定の適用を受けた場合において、同条第2項の規定により施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分があるときは、当該リース譲渡延払収益額に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正令附則6)。
ところで、消費税法第16条《長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》の規定の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において同条の規定の適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち当該適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡延払収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされています(消費税法施行令32③、32の2③)。
この場合であっても、改正令附則第6条第1項に規定する「施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分」があることには変わりありませんので、当然に同条に規定する経過措置が適用されることとなります。 これは、消費税法施行令第32条第1項並びに第2項《延払基準の方法により経理しなかった場合等の処理》及び同令第33条《納税義務の免除を受けることとなった場合等の処理》から第35条《合併等の場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》までの規定の適用がある場合についても同様です(経過措置通達23)。
(リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)
問15 リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要を教えてください。
【答】
事業者が、施行日前に行ったリース譲渡(所得税法第65条第2項又は法人税法第63条第2項本文に規定するリース譲渡をいいます。)について消費税法施行令第36条の2第1項《リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例》の規定の適用を受けた場合において、同条第2項の規定により施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分があるときは、当該リース譲渡収益額に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率が適用されます(改正令附則8)。
ところで、消費税法施行令第36条の2第2項の規定の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において同項の規定の適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち当該適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされています(消費税法施行令32③、36の2④)。
この場合であっても、改正令附則第8条第1項に規定する「施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分」があることには変わりありませんので、当然に同条に規定する経過措置が適用されることとなります。 これは、消費税法施行令第36条の2第3項の規定又は同条第4項の規定により準用される同令第33条《納税義務の免除を受けることなった場合等の処理》から第35条《合併等の場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》までの規定の適用がある場合についても同様です(経過措置通達24)。
(施行日前の借入金の返済に充てる補助金の交付を受けた場合)
問16 施行日前に借入金等を財源として課税仕入れを行い、当該借入金等の返済等のための補助金等が施行日以後に交付された場合、当該補助金等が交付された課税期間における特定収入に係る仕入控除税額の調整計算はどのようになりますか。
【答】
国、地方公共団体等に特定収入がある場合には、仕入控除税額の計算に当たって、その特定収入に係る課税仕入れ等の税額を調整することとされています。
改正令附則第14条《国、地方公共団体等の仕入れに係る消費税額の特例に関する経過措置》では、施行日以後に受け入れる特定収入に係る仕入控除税額の調整計算については、原則として新税率を前提として調整(課税仕入れ等に係る特定収入に6.3/108を乗じて計算)し、施行日前に受け入れた特定収入及び施行日以後に受け入れる特定収入のうち法令若しくは交付要綱等又は国、地方公共団体が合理的な方法により補助金等の使途を明らかにした文書において、同条第2項に規定する旧税率適用課税仕入れ等に係る支出等のためにのみ充てられることが明らかにされているものについては、なお従前の例(課税仕入れ等に係る特定収入に4/105を乗じて計算)によることとなる旨を規定しています。 ところで、法令において借入金等の返済又は償還のための補助金等が交付されることとなっていない借入金等(以下「借入金等」という。)を財源として課税仕入れを行い、後日、当該借入金等の返済等のための補助金等が交付された場合で、当該補助金等の交付要綱等に当該借入金等の返済等のための補助金等である旨が記載されているときは、当該補助金等は当該課税仕入れにのみ使用される収入として使途を特定することとなります(基通16-2-2(1)(注))。
したがって、例えば、施行日前に借入金等を財源として課税仕入れを行い、当該借入金等の返済等のための補助金等(交付要綱等で使途が特定されているものに限ります。)が施行日以後に交付された場合には、当該補助金等に係る仕入控除税額の調整計算は、従前の例(課税仕入れ等に係る特定収入に4/105を乗じて計算)によることとなります。
なお、平成元年4月1日から平成9年3月31日までの間(消費税率3%の期間)に借入金等を財源として課税仕入れを行い、当該借入金等の返済等のための補助金等を施行日(平成26年4月1日)以後に交付を受けた場合の当該補助金等に係る仕入控除税額の調整計算についても、従前の例(課税仕入れ等に係る特定収入に4/105を乗じて計算)によることとなります。
(参考)
国税庁・財務省ホームページ:
平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)
消費税法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第56号)
消費税法基本通達(平成7年12月25日付課消2-25ほか4課共同「消費税法基本通達の制定について」通達の別冊)
平成25年3月25日付課消1-9ほか4課共同「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて」(法令解釈通達)