定款による企業防衛対策-同族会社の相続編-
(1)にわかに脚光を浴びたポイズン・ピルとは
ライブドアのニッポン放送株の取得が発端となって、外国企業と比べて時価総額の低い日本企業は敵対的買収の脅威を感じ、その対策として脚光を浴びたのが「ポイズン・ピル(敵対的買収条項)」です。ここで「ポイズン・ピル」とは、買収者が一定割合の株式を買い占めた場合(20%程度)、買収者以外の株主に自動的に新株が発行され、買収者の買占め割合が低下する仕組みを定款で定めることをいいます。
(2)同族会社における定款による企業防衛とその落とし穴
「株式を公開させるとはそういうことだ」と言ったライブドアの堀江社長の言葉に、同族会社(閉鎖会社)の社長は「うちには無縁のことだ」と思われた方が大半だと思われます。
しかし、同族会社でも定款による企業防衛が必要となる場面があります。
同族会社では、事業の性格上、株主間の人的関係を必要とするため、定款に譲渡制限条項を設け、その内部関係を合名会社に準じて規律しています。ところが、現行法上、株式移転が制限できるのは、「譲渡」の場合だけとされており、「相続」の場合には制限する手段がないのが現状です。
(3)商法改正
しかしご安心ください。
平成18年4月からの施行を目指す商法の大改正で、「定款による企業相続対策条項」の立法化が予定されています。
改正が実現すれば、
「株主Aの死亡に際して、会社はその長男Bを承継者として継続されるものとする」
「株主Aの死亡に際して、会社は常に1名の相続人のみが承継者となって継続されるものとする」
等の定款規定を設けることが可能になると考えられます。
(4)企業相続の「切り札」
このような定款規定が認められれば、同族会社の株式を、一般の相続財産とは別に、会社経営の後継者に直接移転させることが可能となります。
相続において一番紛争の種になりやすい株式の帰属について、疑念のない方法で、その死後の帰属を定款で定めておくことは、家族の結合が崩壊する恐れのある相続争いを未然に防ぐという意味においてまさに企業相続の「切り札」であり、その動向が注目されます。