マイホームの譲渡損失・買換え等の特例の延長 – 平成28年度税制改正・平成30年度税制改正 –
12月 17, 2017
【平成 30 年度税制改正大綱(抜粋)】
3 土地・住宅税制
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(5)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(6)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(参考)自民党ホームページ : 平成30年度税制改正大綱
平成28年税制改正において、平成27年12月31日で期限切れとなる、「マイホームを売ったときの特例」と「マイホームを買い換えたときの特例」について、その適用期限を2年延長(平成29年12月31日まで)することとされました。
個人が、土地又は建物を譲渡して損失が生じた場合には、その損失の金額を他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。
ただし、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合には、譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
- 長期譲渡所得とは、譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える土地又は建物の譲渡による所得です。
住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
特例の概要
住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
これらの特例を、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。なお、これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます。
譲渡損失の損益通算限度額
マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります(下図参照)。
特例の適用要件
- 自分が住んでいるマイホーム(譲渡資産)を譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること。また、この譲渡には譲渡所得の基因となる不動産等の貸付が含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。
イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること。
ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。 - 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)で日本国内にあるものの譲渡であること。
- 譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
- マイホームの譲渡価額が上記(3)の住宅ローンの残高を下回っていること。
特例の適用除外
- 繰越控除が適用できない場合
合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。 - 損益通算及び繰越控除の両方が適用できない場合
イ 親子や夫婦など特別の関係がある人に対してマイホームを売却した場合
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売却した後その売却した家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人なども含まれます。
ロ マイホームを売却した年の前年及び前々年に次の特例を適用している場合
(イ) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)
(ロ) 居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措法35)
(ハ) 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
(ニ) 特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
ハ マイホームを売却した年の前年以前3年以内の年において生じた他のマイホームの譲渡損失の金額について、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算の特例を適用している場合
ニ マイホームを売却した年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5第1項)の適用を受ける場合又は受けている場合
(注) この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できます。
(平成28年税制改正大綱抜粋)
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
※平成29年12月31日まで
マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき
(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
特例の概要
マイホーム(旧居宅)を売却して、新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
これらの特例を、マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。
特例の適用要件
- 自分が住んでいるマイホームを譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること。また、この譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けが含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。
イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること。
ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。 - 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)で日本国内にあるものの譲渡であること。
- 譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に日本国内にある資産(新居宅)で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること。
- 買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供すること又は供する見込みであること。
- 買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。
特例の適用除外
- 繰越控除が適用できない場合
イ 旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合
旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合は、500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません。
ロ 繰越控除を適用する年の12月31日において新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンがない場合
ハ 合計所得金額が3,000万円を超える場合
合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。 - 損益通算及び繰越控除の両方が適用できない場合
イ 旧居宅の売主と買主が、親子や夫婦など特別な関係にある場合
特別な関係には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人なども含まれます。
ロ 旧居宅を売却した年の前年及び前々年に次の特例を適用している場合
(イ) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)
(ロ) 居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措法35)
(ハ) 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
(ニ) 特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
ハ 旧居宅を売却した年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2第1項)の適用を受ける場合又は受けている場合
ニ 売却の年の前年以前3年内の年において生じた他のマイホームの譲渡損失の金額についてマイホームを買換えた場合の譲渡損失の特例を受けている場合
(注) この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できます。
(平成28年税制改正大綱抜粋)
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
※平成29年12月31日まで
マイホームを買い換えた場合に譲渡益が生じたとき
(特定の居住用財産を売却した場合の買換えの特例)
特例の概要
特定のマイホーム(居住用財産)を売却して、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。
これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。
譲渡益課税の繰延額
1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
特例の適用要件
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。
イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。 - 売った年の前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例又はマイホームを売ったときの軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるもので、売ったマイホームについて、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。
- 売却代金が1億円以下であること。
この特例の適用を受けるマイホームと一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間の分割して売却した部分も含めた売却代金により行います。
このため、マイホームを売却した年、その前年及びその前々年の売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例を受けていた場合で、マイホームを売却した年の翌年又は翌々年にこの特例の適用を受けたマイホームの残りの部分を売却して売却代金の合計額が1億円を超えた場合には、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。 - 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。
- 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。
また、買い換えたマイホームには、一定期限までに住むこと。
買い換えたマイホームを住まいとして使用を開始する期限は、そのマイホームを取得した時期により次のようになります。
イ 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
ロ 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで - 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
ただし、耐火建築物以外の中古住宅及び耐火建築物である中古住宅のうち一定の耐震基準を満たすものについては、建築年数の制限はありません。 - 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(注) この特例の適用を受ける場合には、マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(措法35条)やマイホームを売ったときの軽減税率の特例(措法31条の3)の適用を重ねて受けることはできません。
(平成28年税制改正大綱抜粋)
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を2年延長する。
※平成29年12月31日まで
(参考)
自民党ホームページ : 平成28年度税制改正大綱