欠損金の繰越控除の見直し|平成27年度税制改正解説
欠損金の繰越控除の見直し
欠損金の繰越控除は、事業年度に生じた欠損金について、翌年度以降9年間(現行)にわたり所得金額から繰越控除することができる制度です。
平成27年度税制改正における法人税改革では、法人税率の引き下げ→が行われることになりましたが、一方で課税ベースの拡大が図られています。欠損金の繰越控除制度が課税ベースを大きく侵食している状況に対し、控除制限を受けたくない企業には収益改善のインセンティブをもたらすよう、大法人の控除限度(現行:所得の80%)が引き下げられます。
現行 | 27年度~28年度 | 29年度以降 | |
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控除限度額 | 所得金額の80% | 所得金額の65% | 所得金額の50% |
繰越期間 | 9年 | 10年 |
- 平成27年度~平成28年度
平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度 - 平成29年度以降
平成29年4月1日以後に開始する事業年度
繰越控除額については、現行80%までとされている控除限度額が、平成27年度から平成28年度までは所得の金額の65%まで、平成29年度以降については50%とされます。
一方、繰越期間については、平成29年度以降に生じる欠損金について、9年から10年に延長されます。これに合わせ、帳簿書類の保存期間や欠損金に係る更正及び更正の請求期間も10年に延長されます。
経営再建中の法人及び新設法人の特例の創設
経営再建中の法人及び新設法人については、7年間は所得金額の100%の控除を認める特例が創設されました。
中小法人については従来通り100%の控除が可能
資本金の額が1億円以下の中小法人(一定の法人は除く)は、従来通り所得金額の100%の控除が認められます。
繰越期間については、平成29年度以降は、上記大法人と同様、9年から10年に延長されます(平成29年4月1日以後開始事業年度において生じた欠損金について適用)。
また、資本金1億円以下の中小企業については、欠損金の1年間の繰戻還付を受けることもできます。欠損金の繰戻還付は、事業年度に欠損金が生じた場合、当事業年度の欠損金額を前事業年度の所得金額で除した値に、前事業年度の法人税額を乗じて得た金額の還付を受けることができる制度です。
欠損金はできるだけ高い法人税率が適用される所得から控除したほうが、税負担の軽減効果が大きくなります。したがって、法人税率の改正前後の事業年度では、繰越控除と繰戻還付の選択利用も検討しましょう。