会社設立の節税ポイント 

会社設立の節税ポイント 

起業するのに必ずも会社が必要とは限りません。 ただ、起業することが決まったらその事業を個人事業で行なうのか会社組織とするかを選択する必要があります。

また、個人事業から始めて法人化を考えるときも検討の必要があります。

そこで今回は会社を設立するかどうかの目安として、税金面から7つのチェック項目をまとめました。

チェック項目① 法人の軽減税率を利用したい

個人所得税率と法人税率は以下のようになっています。

個人事業の課税所得に対する税率(注1)

<年間所得金額> <所得税率>
195万円以下 5%
195万円超~330万円以下 10%
330万円超~695万円以下 20%
695万円超~900万円以下 23%
900万円超~1,800万円以下 33%
1,800万円超 40%

法人事業の課税所得に対する税率(※資本金1億円以下の場合)(注2)(注3)

<年間所得金額> <法人税率>
800万円以下 15%
800万円超 25.5%

上記の表から、所得が1,800万円を超えると、税率を40%から25.5%に抑えられるので、明らかに法人のほうが節税効果を得られることがわかります。

したがって、年間1,800万円超の利益が見込まれる事業を開始するときや、個人事業で現に1,800万円を超える利益が出ているときは、会社を設立することをおすすめします。

なお、住民税・事業税を考慮した実質最高税率(復興増税のぞく)は、個人で約50%、法人で約35%となります。

(注1)所得税については、復興特別税が創設され、平成25年分から25年間税額が2.1%上乗せされ、住民税均等割りについても平成26年分より10年間1000円上乗せされます。
(注2)法人税率の引き下げ
平成24年4月1日以後に開始する事業年度から、普通法人の法人税率が30%から25.5%に引き下げられます。また、中小法人についても本則税率が22%から19%に引き下げられ、800万円以下の金額に対する法人税率も18%から15%に引き下げられます。
(注3)復興法人特別税の課税
平成24年4月1日以後に開始する事業年度から3年間、法人税額に対する付加税が10%課されます。

 チェック項目② 事業所得を給与所得にしたい(給与所得控除の活用)

個人事業の場合、事業主へ給料を出すことはできません。 しかし、法人にすれば、事業主へ給料を出すことができます。

給与所得には「給与所得控除」があり、年収となる金額の一定割合が自動的に控除されますので、所得の減少効果を期待できます。

事業で800万円の利益がある場合、全額給与で支給すれば、給与所得控除が200万円とれますので、800万円-200万円=600万円となり、所得を200万円減らすことができるわけです(注4)。

(注4)給与収入1,500万円を超える場合の給与所得控除に、245万円の上限が設けられました(所得税は平成25年分から、住民税は平成26年分から)。

チェック項目③ 配偶者に役員報酬を出したい

個人事業でも届出を要件として青色専従者給与を支給することができます。

法人を設立し、配偶者を常務役員とすれば、その職責にふさわしい額の役員報酬を支給することが可能となります。

役員報酬は法人税では経費となり、所得が分散されることにより、代表者1人が報酬をもらう場合より節税になります。

チェック項目④ 退職金を損金可能な経営者保険で確保して受け取りたい

 

個人事業の場合、遺族または本人は退職金を受け取ることができません。

法人では退職金を受け取れます。法人を設立すると、遺族または本人として、法人から死亡退職時には「死亡退職慰労金、弔慰金、特別功労金」を、また通常退職時には「退職慰労金、特別功労金」を受け取ることが可能になります。

支給した退職金等はその額が適正額の範囲内であれば、法人はその退職金等の金額を全額損金に算入することができます。

退職金の支給財源は、法人で損金算入可能な経営者保険で確保しておくと、節税と財源確保の両方の効果を得ることができます。

 チェック項目⑤ 役員住宅を法人で賃貸または取得したい

法人を設立すれば、役員のために住宅を購入、賃貸し、「役員住宅」とすることが可能です。

この場合、費用は法人が負担します。

なお、法人が賃貸または所有する住宅を役員の社宅として貸与している場合には、その役員から「適正額の家賃」を法人が受領しないと、適正家賃との差額は役員賞与とみなされますので注意が必要です。

 チェック項目⑥ 資本金1000万円未満の株式会社の設立で消費税の負担を軽減させたい

資本金1円の株式会社は資本金1000万円の株式会社より消費税の扱いで有利になります。

資本金1000万円の株式会社を設立した場合、設立初年度から消費税が課税されます。

これに対し、資本金1000万円未満の株式会社を設立した場合には、同じ株式会社でも、消費税法の規定により1期目と2期目は消費税が免除となります(注5)。

(注5) 新設法人における消費税事業者免税点の改正
平成23年度税制改正により、消費税の事業者免税点の見直しが行われました。
この改正により、新設法人の場合でも、第2期目から消費税の課税事業者になる場合もあるので注意が必要です。
この改正は、平成25年1月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 チェック項目⑦ いわゆる「法人成り」で、消費税の負担を軽減させたい

 

「法人成り」とは、個人で事業を営んでいる方が、法人を設立してその事業を個人から法人に移行して、以後法人でその事業を運営することをいいます。

前述のように、資本金が1,000万円未満の株式会社には、設立当初2事業年度は消費税の納税義務がありません。また個人事業の場合には、開業してから売上高が1,000万円を超えると、2年後から消費税を納めなければなりません。

すなわち、個人事業で開業し、売上高が1000万円を超えたら消費税が課税される前に資本金1000万未満の株式会社を設立して「法人成り」すれば、そこからまた2事業年度消費税が免税となります(注5)。