取引相場のない株式等の評価における「会社規模」の判定基準の見直し – 平成29年度税制改正
平成 29 年度税制改正では、取引相場のない株式について、相続税法の時価主義の下、より実態に即した評価の見直しが行われることになりました。
これを受け、平成 29 年5月15日に改正自社株評価通達が国税庁から公表されました。新たな評価方法は、平成 29 年1月1日以後に相続等により取得した財産の評価において一律に適用されることとなります。
「会社規模」の判定基準の見直し
会社支配権を持つ同族株主等にかかる取引相場のない株式等の相続税評価は、会社区分(大・中・小)に応じ、類似業種比準方式または純資産価額方式、もしくはそれらの併用方式にて計算されますが、評価会社の規模区分の金額等の基準の見直しにより、大会社及び中会社の適用範囲が総じて拡大されることとなりました。
会社区分は大・中・小会社、さらに中会社を3つに区分
取引相場のない株式等の発行会社の規模は、大は上場会社に匹敵するものから、小は個人企業と変わらないものまで様々であり、これらの会社の株式を、会社の規模と関係なく同一の評価方法により評価することは適当ではないことから、
①上場会社に匹敵するような大規模な会社を大会社、
②個人企業と変わらない規模の会社を小会社、
③これらの会社の中間の規模の会社を中会社
に区分、さらに中会社を3つに区分して、それぞれに適した評価方式により評価することとしています。
この会社規模については、総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)(以下「総資産価額」という。)、従業員数及び直前期末以前1年間における取引金額(以下これらを併せて「総資産価額等」という。)に応じて、判定することとしています。
通達改正の概要
⑴ 大会社
大会社は、従来から上場会社に匹敵するような規模の会社と区分しており、法人企業統計調査に基づき、上場審査基準に相当する総資産価額等を算出することとしていますが、国内証券市場については、マザーズ、JASDAQ等の新興市場が創設され、更に、近年、新興市場を含む金融商品取引所が順次再編されており、上場審査基準も見直しが行われ、上場会社の実態にも変化が生じています。
そこで、近年の上場会社の実態に合わせて、現在の上場審査基準を基に規模区分の金額等の基準を見直すこととされました。具体的には、代表的な株式市場である東京証券取引所第一部等の上場審査基準のみならず、新興市場の上場審査基準についても加味した上で、法人企業統計調査に基づき総資産価額等を算出することとされました。
⑵ 中会社
イ Lの割合が 0.9 の会社
中会社は大会社と小会社の中間の規模の会社であり、とりわけLの割合が 0.9 の会社(以下「中会社(大)」という。)は、大会社に準ずる会社であって、上場を企図すればすぐに上場できる規模の会社と考えられることから、新興市場に上場する会社と同視し得るものとの考え方の下、新興市場の上場審査基準を基に、総資産価額等が算出されました。
ロ Lの割合が 0.75 の会社
現行通達における取扱いと同様に、中会社(大)の基準のほぼ 50%(総資産価額及び取引金額は中会社(大)の 50%、従業員数はその 60%)に相当する総資産価額等を算出されました。