中小企業向け設備投資促進税制の拡充 – 平成29年度税制改正解説
平成 29 年度税制改正では、、中小事業者の「攻めの投資」を後押しするとともに、わが国のGDPの約7割を占めるサービス産業の生産性の向上を図るため、サービス産業も含めた中小企業が行う生産性の向上につながる設備投資への支援を拡充する措置が講じられることとなりました。
中小企業経営強化税制の創設(新設)
中小企業投資促進税制のうち、生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善に資する設備への投資を対象に、即時償却又は税額控除ができる上乗せ措置(適用期限:平成29年3月31日まで)について、中小企業等経営強化法の認定計画に基づく制度に改組した上で、これまで対象外であった器具備品及び建物附属設備を対象設備に追加することとされました。
類型 | 生産性向上設備(A類型) | 収益力強化設備(B類型) |
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要件 | ①経営強化法の認定 ②生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備 | ①経営強化法の認定 ②投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 |
対象設備 | ・機械・装置(160万円以上) ・測定工具及び検査工具(30万円以上) ・器具・備品(30万円以上) (試験・測定機器、冷凍陳列棚など) ・建物附属設備(60万円以上) (ボイラー、LED照明、空調など) ・ソフトウェア(70万円以上) (情報を収集・分析・指示する機能) | ・機械・装置(160万円以上) ・工具(30万円以上) ・器具備品(30万円以上) ・建物附属設備(60万円以上) ・ソフトウエア(70万円以上) |
確認者 | 工業会等 | 経済産業局 |
その他要件 | ・生産等設備を構成するものであること (事業の用に直接供される設備(生産等設備)が対象。例えば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備等は対象外。) ・国内への投資であること ・中古資産・貸付資産でないこと、等 | |
税制措置 | 即時償却 又は 7%税額控除(資本金3千万以下もしくは個人事業主は10%) |
中小企業投資促進税制(上乗せ措置改組、一部見直しのうえ延長)
中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(7%)又は特別償却(30%)の適用を認める税制です。
平成 29 年度税制改正において、中小企業投資促進税制の対象設備等について一部見直しを行い(上乗せ措置を改組し、中小企業経営強化税制を創設、器具備品を縮減)、適用期限が2年間延長(平成31年3月31日まで)されることとなりました。
項目 | 内容 |
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対象者 | ・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合等) ・従業員数1000人以下の個人事業主 |
対象業種 | 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、 港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、 内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(物品賃貸業及び映画業以外の娯楽業を除く) ※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く |
対象設備 | ・機械及び装置【1台160万以上】 ・測定工具及び検査工具【1台120万以上、1台30万以上かつ複数合計120万以上】 ・一定のソフトウェア【一のソフトウェアが70万以上、複数合計70万以上】 ※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く ・貨物自動車(車両総重量3.5トン以上) ・内航船舶(取得価格の75%が対象) |
措置内容 | ・個人事業主 30%特別償却 又は 7%税額控除 ・資本金3,000万以下の中小企業 30%特別償却 又は 7%税額控除 ・資本金3,000万超の中小企業 30%特別償却 |
商業・サービス業・農林水産業活性化税制(延長)
商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、商業・サービス業者等が経営改善設備(※1)を取得した場合に、取得価額の30%特別償却又は7%税額控除(※2)ができる制度です。
(※1)経営改善設備
認定経営革新等支援機関等(商工会議所等)による、経営改善に関する指導に伴って取得する下記の設備。
・器具・備品(ショーケース、看板、レジスター等): 1台30万円以上
・建物附属設備(空調施設、店舗内装等): 1台60万円以上
(※2) 税額控除の対象事業者
資本金が3,000万円以下の中小企業等又は個人事業主に限る。
平成 29 年度税制改正で、消費税率の引き上げに向け、経営改善の取組を行う事業者の設備投資を後押しするため、 適用期限が2年間延長(平成31年3月31日まで)されることとなりました。
(平成29年度税制改正大綱抜粋)
中小企業向け設備投資促進税制の拡充
中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
① 中小企業投資促進税制の上乗せ措置(生産性向上設備等に係る即時償却等)について、次の中小企業経営強化税制として改組し、全ての器具備品及び建物附属設備を対象とする。
青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアで、特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合には、その特定経営力向上設備等の普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却とその取得価額の7%(特定中小企業者等にあっては、10%)の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を上限とし、控除限度超過額は1年間の繰越しができる。
(注1)中小企業者等及び特定中小企業者等の範囲は、中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の対象法人のうち、中小企業等経営強化法の中小企業者等に該当するものとする。
(注2)上記の「生産等設備」とは、その法人の指定事業の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう。なお、事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しない。
(注3)上記の「特定経営力向上設備等」とは、経営力向上設備等のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたものをいう。
(注4)上記の「経営力向上設備等」とは、中小企業等経営強化法に規定する次の設備をいう。
イ 生産性向上設備
次の(イ)及び(ロ)の要件を満たす機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限る。)、器具備品、建物附属設備及びソフトウエア(設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る。)をいう。ただし、ソフトウエア及び旧モデルがないものは、
次の(イ)の要件を満たすものとする。
(イ)販売が開始されてから、機械装置:10 年以内、工具:5年以内、器具備品:6年以内、建物附属設備:14 年以内、ソフトウエア:5年以内のものであること。
(ロ)旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること。
ロ 収益力強化設備
その投資計画における年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるものであることにつき経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアをいう。
(注5)上記の「一定の規模以上のもの」とは、それぞれ次のものをいう。
イ 機械装置 1台又は1基の取得価額が 160 万円以上のもの
ロ 工具及び器具備品 それぞれ1台又は1基の取得価額が 30 万円以上のもの
ハ 建物附属設備 一の取得価額が 60 万円以上のもの
ニ ソフトウエア 一の取得価額が 70 万円以上のもの
(注6)指定事業は、中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善
設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度のそれぞれの対象事業に該当する全ての事業とする。
② 中小企業投資促進税制について、上記①のほか、対象資産から器具備品を除外した上、その適用期限を2年延長する。
③ 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用期限を2年延長する。
④ 中小企業投資促進税制、特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度及び上記①の中小企業経営強化税制の控除税額の上限について、これらの制度の税額控除における控除税額の合計で、当期の法人税額の 20%を上限とする所要の整備を行う。