少額減価償却資産・交際費の損金算入特例期限の延長 – 平成28年度・平成30年度税制改正 –

少額減価償却資産・交際費の損金算入特例期限の延長|平成28年度税制改正解説

少額減価償却資産・交際費の損金算入特例期限の延長 – 平成28年度・平成30年度税制改正 –

  12月 16, 2017

平成30年度税制改正にて、中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例、交際の損金不算入制度の適用期限が2年延長(平成32年3月31日まで)されることとなりました。

【平成 30 年度税制改正大綱(抜粋)】

三 法人課税

5 その他の租税特別措置

(国 税)
〔延長〕

(5)交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。

(8)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。

(参考)自民党ホームページ : 平成30年度税制改正大綱

平成28年度税制改正では、法人実効税率の「20%」台への引き下げが実施されることとなりましたが、一方で、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保する趣旨から、期限切れとなる租税特別措置法について継続的な見直しが行われています。

平成28年3月31日で期限切れとなる租税特別措置法のうち、「生産性向上設備投資促進税制」については、期限どおりに縮減・廃止されることが確定いたしましたが、「少額減価償却資産の損金算入特例」については、縮減 (従業員数要件の導入)のうえ、「交際費等の損金算入の特例」については、現行制度のまま、その適用期限を2年延長することとされました。

少額減価償却資産の特例

減価償却資産は、通常、法定耐用年数に応じて減価償却費として損金経理しますが、少額のものは取得時に、その取得価額の全額を損金算入(即時償却)することが認められています。

さらに、青色申告書を提出する中小企業者等については、取得価額30万円未満の減価償却資産の即時償却が認められています。

【適用期限】

  • 「平成28年度税制改正」で2年間延長(平成30年3月31日まで)

【少額減価償却資産の取扱い】

本則 特例(中小企業のみ)
資産の取得価額 10万円未満 20万円未満 30万円未満
損金算入方法 全額損金算入 3 年間均等償却 全額損金算入
限度額 300万円以下(注)
償却資産税の取扱い 非課税 非課税 課税(合計150万円以上)

(注) この特例は、対象となる減価償却資産の取得価額の合計額が年間300万円を上限としており、その超える部分に係る減価償却資産については適用対象から除外されます。

(1) 取得価額30万円未満の特例概要

この制度は、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。
取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成30年3月31日までの間に取得し、事業の用に供した場合に適用されます。

(2) 適用対象

青色申告者である中小企業者等に限られます。

 青色申告書を提出する「中小企業者等」とは

<「中小企業者等」の範囲>

以下のような、法人・個人・組合等が該当します。

  1. 法人
    (イ) 資本金が1億円以下の法人(ただし、大規模法人の子会社は除かれます)
    ※ 常時使用する従業員の数が1000人超の法人を除く(平成28年度税制改正)
    (ロ) 資本を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人以下の法人
  2. 個人
    (ハ)常時使用する従業員の数が1000人以下の個人
  3. その他
    (ニ)中小企業等協同組合、農業協同組合など

(3) 対象資産と限度額

対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。
ただし、事業年度における取得価額の合計額が300万円(注)に達するまでの取得価額の合計額が限度となります。
(注)事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額になります。

(4) 適用手続き

この制度の適用を受けるためには、法人税の確定申告書に『別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書』を添付する必要があります。

 注意点

  1. この特例は、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。
    また、取得価額が10万円未満のもの又は一括償却資産の損金算入制度(20万円未満)の適用を受けるものについてもこの特例の適用はありません。
  2. この特例は、取得価額が30万円未満である減価償却資産について適用がありますので、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となり、また、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。

(5) 少額減価償却資産の会計処理方法

少額減価償却資産の取得価額の判定は、消費税の会計処理(税込経理方式又は税抜経理方式)によって異なります。
例えば、税込31万3200円(税抜価格29万円)のパソコンを購入した場合、取得価額は税込経理方式の場合は31万3200円、税抜経理方式の場合は29万円でそれぞれ判定されます(消費税率は8%を前提)。

(平成28年度税制改正大綱抜粋)

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、 対象となる法人から常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人を除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。

中小企業等の交際費等の損金算入の特例

資本金1億円以下の中小企業等が、交際費等を支出した場合、800万円までは全額損金算入することができます。

平成25年度税制改正

中小法人について、定額控除限度額が年600万円から年800万円に拡大されるとともに、定額控除限度額に達するまでの金額の損金不算入額が0とされました。

交際費改正

次の①~③の要件を満たす飲食費については、交際費等に含まれません(800万円までとは別に、費用(会議費)として損金算入できます。

  1. ① 社内飲食費ではないこと
  2. ② 1人当たり5,000円以下の支出であること
  3. ③ 日付・参加者・人数・金額・飲食店名などを記載した書類を保存しておくこと

適用期限

  • 「平成28年度税制改正」で2年間延長(平成30年3月31日まで)

接待飲食費に係る損金算入の特例

平成26年度税税改正大綱において、資本金1億円超の大企業についても、交際費のうち飲食費については、50%まで損金算入を認めることとなりました。

上限は設けず、損金算入の割合を50%とします。

適用期限

  • 「平成28年度税制改正」で2年間延長(平成30年3月31日まで)

中小企業については有利な方を選択可能

資本金1億円以下の中小企業については、

  1. ① 800万円までの交際費の全額損金算入
  2. ② 飲食接待費の50%損金算入

のどちらか有利な方を選択できます。

(平成28年度税制改正大綱抜粋)

交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。

(参考) 自民党ホームページ : 平成28年度税制改正大綱